社長の竹森です。
私たちの仕事は、なんなのだろうと時々考えます。施設介護ではなく、在宅の介護。訪問介護。
施設介護では、何よりも身体介護中心。介護をするために出来上がった建物の中で行う介護です。
では、訪問介護は?
「自宅で行う介護」と対比的に言っても、それは何かが違う気がするのです。もちろん、身体介護はします。そして生活をサポートする生活援助も。でも、神髄はその仕事(行為)の合間に含まれている時間のような気がします。
自宅は確かにその人の家で、一番落ち着くところ。でもそこに、ポツンと一人で過ごしているときに、また、ベッドに横になっているときに、「こんにちわー」と来てくれる存在。おなかがすいていたり、おむつが気持ち悪くなった時に、「来ましたよ」と言ってくれる存在。
しばらく誰とも話さなかった時間のあとにやってきて、顔を見てくれ、話してくれ、笑ってくれる人。子供の顔も家族の存在もわからなくなってきたときに、なんとなく頼りたい人。
私たちの仕事は、その方の人生の最後の記憶に残る仕事かなあと。これは、ケアマネの仕事も同じ。
だから、ヘルパーさんもケアマネも、しっかりお話して人間関係作らないとだめだめで、一人で待ってくれてる利用者さんが、人間のあったかみを感じてくれて、なんぼです。ただの作業者になってはダメなのです。もちろん介護の仕事は大変だから、そんなのきれいごとだよ!という人もいるけどね。
時々、社員のみんなに「在宅介護の仕事で何がよかったと思う。どこがおすすめポイント?」と聞くことがあります。
私としては、「感謝される」とか「喜んでもらえる」とかの返事を待っているわけです。多分世の中のほとんどの人が、そうなのかな?と思ている答え。
でも、今まで、ほとんどのスタッフの答えは
「利用者さんに色んな話をしてもらって、勉強になる気がするんです。」
「昔話が聞けて面白い。」とかなんです。
そんなある日、認知症研修の打合せで、面白い話を聞きました。
ずっとずっとまえで、もう亡くなっている利用者さんの話をあるスタッフから聞きました。
その思い出は・・・
100歳越えで、独居のお祖母さんが今でも一番心に残っています。すごく気丈で気が強い方で、でもかなりの認知症でした。最初は、家にも入れてもらえず、なんでも拒否で、とにかく困った困った。
でも、入れ替わりたちかわり、ヘルパーが訪ねていくうちに、まずは玄関に入れてもらえるようになり、少しずつ、掃除やお食事も手伝えるようになりました。
とっても気丈なお祖母さんで、ちょっとでも身体にさわろうとすると「何するの!」って抵抗、大暴れすることもしばしばでした。トイレも這ってでもいくような方で、最後の頃はトイレの場所がわからなくなってきていて、ヘルパーさんが工事中の通路のように、廊下にテープの道筋を貼っていました。その道筋を、ずるずる這ってトイレに向かう気丈な方でした。
そして、最後まで嫌がっていたのはお風呂。
もう、大暴れで、デイサービスでの入浴介助では、怪我をするスタッフが出るほど。ところが、自宅で何度かみんなで工夫していくうちに、入れるようになったのです。
そのコツは・・・
私自身もお風呂にはいる支度をして、自然に「お風呂ですよ〜入りましょうか~?」というと「わかった」といって入ってくれたんです。ご機嫌がいい時は、一緒に湯につかろうとまで言ってくれ、湯船の中で少しずついろいろお話してくれました。
戦争の話、昔住んでいた中国の話。しっかりいくつかの中国の駅名も覚えていました。きっと、当時はバリバリのキャリアウーマンだったのだろうという内容。とっても頭のいいしっかりした女性だったんだろうな。そう思いながら聞いていました。
その話はとっても面白く、色んなエピソードでいっぱいでした。
なんでも介護するのが難しい方で、時には、食べたくない!!と食事も拒否しました。
そこで、「中国でお仕事したんですよね、まだまだこれからだから、しっかり食べなきゃね!」「今日は頑張ったんだから、美味しい物食べましょ!」とか励ますと、にやっと笑って食べてくれました。
でもヘルパーさんによっては、「こんにちはー、体調どうですか?」とか聞くと、「はあ!?お前何言ってんだ!?」とか言う人でした。
最後まで、気丈で頑固な方でしたし、声に出して感謝をする人では、なかったけど、
なんとなく待っていてくれてるんだなって感じで「またきてくれるのかい?」ってポツンということもありました。
そのうち、だんだん色んなヘルパーさんを受け入れてくれたけど、オムツ交換だけは、本当に嫌がった。プライドで許せなかったんでしょうね・・・・・。
・・・・・そしていくらでも思い出話が続いたのでした。
私たちの仕事は「少しでも自分のことを知ってる、わかってくれている人がいます」を伝える仕事なんですね。
一人じゃないですよ。不安で辛いのはわかっていますよ。少しだけどお手伝いしますよ。
私たちがいるのよ。
それを伝えるために、毎日訪問する仕事の気がします。